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秋 告白 後日談

下にある「秋告白」の続きという名の小話。
漫画を描く時間がなかったので、超特急小話です。つまり文章。
本当は挿絵とかつける予定だったんですが、土壇場で何故か絵板が動作不良。
オイオイ(滝汗
そんな感じで以下ツラツラ長いです。






************ 最初は何を言われたのかわからなかった。
貴匡が居なくなってからしばらくして、いつのまにか八重は自室のベッドにうつ伏せて寝転がっていた。たぶんいつも通りにバスに乗って、バス停から歩いて帰宅したのだろう。
その間のことは全く覚えていないが。
涙はもう涸れた。涸れない涙はないとよく言うけれど、今はそれが寂しい。


貴匡の好きなところ。
大人っぽくて。
優しくて。
いつも笑っている人。


あの笑顔が好きだった。
今でも好きなのは変わらないと思う。でも少し怖くなった。
話している最中、貴匡はずっと笑っていた。拒絶の言葉の最中でさえ、にこやかに微笑むあの人が少し怖くなった。


私は嫌われていた。
先輩後輩の間柄である兄との交友の延長。ただそれだけの付き合い。
お兄ちゃんあっての優しさ。
それを勝手に勘違いしていた自分の滑稽さに、胸の奥がもやもやとする。
貴匡を想う自分の気持ちが全部、あの人にとっては煩わしくていらないものだったのだ。笑っている顔の下で、一体どんな風に想われていたんだろう。
それを考えると、胸のもやもやは重みを増したような気がした。


眼が腫れぼったくて、鼻がぐずぐずする。
顔を洗おうと部屋から出て洗面所へ向かった。家内を忙しく動き回る女中さんに会わないようにしながら。
こんな顔、誰にも見せられない。
なのに、一つの扉の前で足が止まる。兄である、八雲の部屋の前。
吸い込まれるように腕が伸び、ノックを2回。
「開いているよ」という応えを待って、ドアを開けると待っていたのは兄の笑顔。

「珍しいね、八重の方から僕の部屋に来るなんて!お兄ちゃんはいつでも大歓迎だ……」

いつも通りの明るい声。でもそれが八重の顔を見た途端に変わる。
『甘いお兄ちゃん』から『兄』の顔へと。
俯いたままの八重は見ることが出来なかった、その表情の変化。

「適当に座って待っていなさい。お茶を持ってきてあげるから」

妹を部屋にいれ、すれ違いざまに頭を優しく撫でた。八重は素直に頷き、定位置であるベッドの机寄りに腰掛けた。
しばらくして八雲が戻ると、彼女は同じ姿勢そのままで動いた様子がなかった。相変わらず俯き、ベッドに腰掛けている。
八雲は机の上に散らばった店の書類を片隅に寄せて、替わりにお茶が乗った盆を置く。
夜も更けているので、今回淹れてきたのはほうじ茶だ。
暖かな湯気の立つそれを妹の手に持たせ、こちらは椅子に腰掛ける。
これが彼の部屋で兄妹が過ごすときの、いつもの配置だ。

「それで今日は一体どうしたんだ?」

最初にこちらから一声かけ、あとは八重が話し出すのをゆっくりと待つ。無理に問いただしたりせず、自然と言葉が出るのを促した。

「あのね…。
 あのね私、今日貴匡さんに告白したの。でもね…」

それから起こったこと、さっきまで部屋で考えていたこと、ぽつぽつと八重は八雲に語った。
話すうちに声は小さくか細くなっていったが、八雲は相槌をうちながら終始静かに聞いていた。


「貴匡さんには私の想いは、重くて邪魔なだけだったのかな…」
「いや、それは違う」

淹れたお茶がスッカリ冷めてしまった頃、最後に呟かれた言葉にだけ、即座に否定の言葉を返す。
えっと顔を上げる妹の目を見て、八雲は八重に問いかけた。

「先輩は話してる最中、ずっと笑ってたんだね。にこやかに」
「う、うん」

言うや否や、はぁーとため息を一つついて「ったく先輩は」と、この兄にしては珍しく悪態をついた。訳がわからず、またなんと言ったらよいのかもわからずに、八重は戸惑いの視線を八雲へと投げかける。
それに対して「ごめんごめん」と笑って、新たな言葉を紡いだ。

「先輩は不器用な人だからね。その辺は分かってあげて。
 それと、これから話すことを良く聞いて。そして自分で考えてごらん。自分はどうしたいのか、どうしたらいいのかってことを」

八雲の眼の真剣さにおされ、八重は首を縦に振った。



「八重、大人っていうのはどうやってなるものだと思う?」
「大人?」

それは年を重ねて、経験をつんで、時間の経過と共に自然となってゆくものではないのだろうか。
勉強したり、遊んだり、他愛も無い日々を過ごしながら思い出を重ね、その上に立つのが大人だと八重は思う。

「まあ、それが経過としては理想的だね。だけど世の中全てが理想通りにいくわけじゃない。
 先輩はもう大人で、僕も大人って言ってもいいかなこの際。誰もが理想の大人になり行程を踏めるわけじゃない。八重にとって、僕らは大人かい?」

高校生の八重の目から見て、貴匡は非の打ち所のない大人に見える。兄の八雲も、父からすでに家業の仕事をいくつか任されている。普段のシスコンっぷりがなければ、もう少しまともに見えるのだが…。
だが、そこでふと思い出す。
本当に危ないときや、八重が八雲を必要としているとき。兄は絶対に助けてくれたし、そばに居てくれた。
大事なときは必ず手を差し伸べてくれていた。絶対に外してはならない場面で、兄はそれを外したことがない。
八雲もいつのまにか、大人になっていたのだ。

「大人、だとおもう。貴匡さんも、お兄ちゃんも」

「先輩はさ、無理矢理大人にならざるを得なかった人なんだ。子供を中断してね。
 八重は覚えてるかな。僕が大学に入った年にあった弓道大会。あの後すぐ、先輩は大学を退学したんだ」

そこに一つの家族があった。両親と長男、長女、双子の弟の6人家族だ。
ある日母親が出で行き、その結果父親はおかしくなった。妹と弟はまだ小さく、収入の無くなった家で働けるのは長男だけ。
長男は大人になるしかなかった。何よりも大切な家族を守るために、色々なものを殺ぎ落として大人になった。
ありふれているとは言わない。それでも珍しいともいえない一つの不幸の形。


八雲が話し終わったとき、この部屋に来たときとは違う涙で、八重の頬は濡れていた。
自分と、貴匡に、泣いていた。
何も知らなかったし、知ろうともしていなかった。好きな人のことなのに。自分で描いた勝手なイメージを今まで押し付けていた。
温室育ちの自分を、遅まきながらに自覚する。

「…お兄ちゃん」

今、自分がしたいこと。

「私、もっと知りたい。ううん、知らなくちゃ駄目だって思った」

どうしたいのか、そしてどうすればいいのか。後は自分で考えて、行動しなければ。
ちゃんと知りたい。今まで考えもしなかったことを考えるために。
自分が変わるためにも。

「来週ちょっと、お出かけしてくるね」

「お土産を忘れずにね。甘いものでも持っていってあげるといいと思うよ」

おでかけの行き先を見越して八雲が笑う。

「じゃあ、美味しいお菓子作っていくわ。余ったらお兄ちゃんにあげるね」

腕によりをかけて作ろう、と力強く拳を握り、すくっとベッドから立ち上がった。

「お兄ちゃんありがとう。私ちょっと、頑張ってみるね。
 おやすみなさい」

「おやすみ八重」

部屋を出る彼女の頭を撫でて、八雲は妹の笑みを見送った。泣き腫らした眼はまだ充血して赤みを帯びていたが、宿った光は強かった。




************
おしまい。

お出かけ先というのは、夜音家ですな。いろはちゃんにお話を聞きに行きます。
兄からは心情面での夜音家事情を聞きましたが、いろはちゃんからはダイレクトに現実的な状況を聞きます。つまりはお金の話ですよ。

八重「あの、何か私にできることありませんか?」

いろは「お金ください」

端的に表すとこんな感じで(端的過ぎる
八重個人では一家を支援するだけの金銭工面が出来るわけはなく、何も出来ないのかともやもや。
せっかくやる気出したのに、また挫折させてますよ。
繰り返しますが、イジメじゃありません。です。

で、それから貴匡さんが大学を自主退学したこととか、いろはちゃんの進学のこととか、色々聞いて思うわけですよ。
家庭の事情で学校に行けない人をなんとかしてあげたいなって。
漠然とですが、やりたいことが決まってきた感じですかね。

3学期もがんばろー。
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